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プーのイニシエーション

眠れないのでホリプロ公式のジャパンプレミアの映像見てたら、松山くんが
L と同じように 自分も中にこもってた時期があって、外へ出る事で学んだことも多かった。(中略)これから外へ出て行く人、次のステップに進もうとしている人に見てもらいたい。何か感じてもらえると思う」
みたいなことを言ってました。( ちょっと違ってるかもしれませんが)
雑誌でも同じことを言ってるのを読んでたはずなんですが、今日はなぜか不意に思い出したことがありました。
息子のことです。



息子のプーは中学生の頃、ひきこもりでした。
と言っても、部屋の中にひきこもっていたわけではありません。
彼は、長い前髪の奥にひきこもっていたのです。
中学生になってプーの口数はめっきり減りました。でもミジンコはその事に関してはそんなに気にしてはいませんでした。中学生男子ならこんなものだろうと思ってたし、朝はちゃんと起きてご飯を食べて学校へ行き、夜はご飯を食べながら少しは学校の話などもしてお風呂に入って寝る、というミジンコの家系には珍しいくらい規則正しい生活でしたから。
ただ、正直な話、当時のミジンコは諸々の事情で忙しくしていて、プーやイトキチの変化にはほとんど気がついていませんでした。
「プーくんの髪、長すぎるんじゃない?子供たちの間でも噂になってるよ」
最初に指摘してくれたのは、仲良しのM子でした。M子の娘も同じ中学の隣のクラスで、M子は家で塾をしてましたから子供たちの事は学校の先生より良く知ってました。
M子に言われて改めてプーを見れば、もはや前髪は眉毛の下、後ろは詰襟をすっかり隠す長さです。
「散髪してきたら?」
ああ」
「学校で何も言われないの?」
「べつに」
そんな会話を何度繰り返したことか。
そんな繰り返しの中で、プーの髪はどんどん伸びて、鬼太郎以上貞子未満くらいになり、
プーのクラスの父兄に会う度に髪のことを言われるようにもなりました。
姉のイトキチも一番荒れてた頃だったし、母親失格!と指摘されてるように思えて、ミジンコ的にもかなり辛い時期でした。
でも、そうしてるうちに、これはプーの思春期の通過儀礼ーイニシエーションーなんじゃないかと思うようになりました。

★イニシエーションとは『人がある状態から他の状態へと移行する際、洗礼等と同様に通過の際に呈する特別な儀礼』By はてなダイアリー


プーは当時太っててコンプレックスいっぱいだったみたいだし、自分で自分を受け止めきれなくて、長い前髪の奥に隠れているんだな。 と思えるようになったんです。
『反抗期』だからという捉え方をしていた時は、なんとなくおっかなびっくりで嵐が過ぎ去るのを待つような気持ちだったのが、『イニシエーション』だと捉えたら、プーがいつか必ずあの前髪の向こうから出てきてくれるはずだと信じられるようになって、落ち着いて黙って見守ろうと思えるようになったのは不思議です。
同時に、親に暴言吐いたり、暴力振るったりする代わりに、ああして前髪の奥に閉じこもって自分自身を受け止めようとしてくれてるプーがいじらしくてけなげに思えて、申し訳なくて涙が溢れました。もっと、頼りになる親なら、安心して暴言吐いたり暴力振るったりできるんだろうに。 プー自身にそんな自覚はなかったかもしれないけれど、なんか、親としてホントに情けないと思った。 ミジンコ自身、はじめて本気で、ちゃんとした親になりたい!と願わずにはいられませんでした。

修学旅行の前に、担任の先生から電話がありました。髪を切らなかったら修学旅行に参加できません、とか言われるのかなー、と思ったら
「髪を切ったら男前になるのにって言ったんですけどね」
と担任のエビちゃんは苦笑しました。
「ちょっとでもいいから切ってくればプーくんの意思表示だと思いますんで、参加できます」
旅行の前日、プーはイトキチに髪を切ってもらいました。だけど、ほんの肩先1センチ。
前髪は断固として切らせませんでした。
そのままプーは東京3泊4日の修学旅行に出かけました。
そんなわけで、皇居でも東京タワーでも日光でも、○○中学校2年A組の集合写真には、もれなく貞子が映っています。

中学3年の秋の文化祭で、プーは友達とバンドを組んでドラムを叩きました。
ミジンコは仕事が休めなくて見に行けなかったのですが、担任のエビちゃんから電話をもらいました。
「プーくんがドラムやったんですよ!みんなの前で歌ったんですよ!」
涙声でした。
あの頃の中学校の先生たちには本当に感謝しています。
プーのイニシエーションをミジンコと一緒に黙って見守ってくれました。叱る時も、ユーモアをまじえてプーが納得できるまで話してくれた。
あの時、先生たちが無理やりプーの髪を切ってたりしたら、プーだけじゃなくミジンコも気力の糸がぷつっと切れて、どんな事になってたかわかりません。
いい先生たちに出会えて、本当に幸運でした。

高校受験の前日、プーはようやく髪を切りました。きっと、きっかけを探していたのでしょう。
前髪の奥から出てきたプーは、スッキリ男前で以前よりずっと輝かしい顔をしてました。
第一志望校の受験に失敗して、ちょっと落ち込んだりもしましたが、もう髪の毛の奥に隠れようとはしませんでした。
ずいぶんたくましくなったプーと一緒に、ミジンコ自身も、一つのイニシエーションを終えたような気がした春でした。

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